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 ■ フィギュア(ガレージキット)の著作物性  .



【概要】

キャラクターを利用した商品のひとつに、精巧な立体フィギュアがあります。手のひらサイズの小さなものから、7分の1や8分の1スケールといったかなり大きなサイズまで多種多様であり、アニメや漫画のキャラクターを見事に再現しています。値段も、6000円前後と安くはなく、時に、1万円を超える作品まである、人気のジャンルです。

今回は、果たして、そのような「立体フィギュアに著作権ってあるの?」がテーマです。これは見方を変えれば、「標準的な体格のかわいい女の子が、人間の所作としてはそれほど特異ではないポージングをとっているだけなのに、そういうのにまで著作権が認められてしまうと、困らない?」という疑問だと言えます。

結論としては、フィギュアについては原則として著作権が認められると考えるのが無難です。他方で、カプセルフィギュアや、ひと箱500円前後で販売される食玩と呼ばれるラインナップについては、否定的な記述も時に見かけますが、それは裁判例の誤解によるものと思われます。これらについても、原則として著作権があるものと考えるのが妥当であるといえます。

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≪キャラクターフィギュアと著作権≫

アルターやグッドスマイル・カンパニー、それにコトブキヤなど、美麗なキャラクターを(平面的な次元から)立体化して商品として販売していますが、これらフィギュアにも著作権は認められるのでしょうか?

実は、この点については、既に10年以上も前に争われており、最高裁の上告棄却をもって一応の結論が出ているのです。即ち、京都地裁平成9年7月17日判決(平成7年(ワ)第1371号)、控訴審・大阪高裁平成10年7月31日判決、上告審(第三小法廷)・最高裁平成11年2月9日決定(平成10年(オ)第1834号)。

ところが、最近、『不思議の国のアリス』や動物をモデルにした食玩について、著作権を否定するかのような裁判例があり、中途半端なマニュアル本などを見ていると、やや混乱した記述となっております。

以下、これらの関係をどのように考えるべきか、みていくことにしましょう。



≪京都地裁の事件について≫

この事案は、当時人気があった『ファイブスター物語』のロボットのフィギュアについて、その「二次的著作物性が認められるか?」という形で、著作権・著作物性が問題となりました。というのは、フィギュアに(二次的)著作権が発生していなければ、原型師に(二次的)著作権が帰属する余地がないわけで、それによって、著作者人格権に基づく権利行使にも理由がない、ということになるからです。


この点につき、裁判所は、非常に、フィギュア作品に対する理解を示した判断をくだしております。

まず、一審裁判所は、「一般に、漫画等のキャラクターをプラモデルや人形等に立体化する際、その立体化の過程において創作性が認められない場合には、そのプラモデルや人形は、美術著作物である当該キャラクターが描かれた漫画又は当該キャラクターの複製(著作権法2条1項15号)であり、プラモデルや人形自体に第二次著作物としての著作物性を認めることはできない。しかしながら、キャラクターを立体化する場合においても、その立体化の過程において創作性が認められる場合には、当該キャラクターの描かれた漫画又は当該キャラクターの変形、すなわち美術著作物の変形(同法2条1項11号、10条1項4号)として、第二次著作物としての著作物性が認められると解すべきである」との一般論を述べております。

学説上も、この一般論については異論がないようです(芹田幸子「ガレージキットの第二次著作物性並びに職務著作の成立要件」(2001年7月)村林隆一古稀記念論文)。


ついで、裁判所は、ガレージキットのジャンルにおいては忠実に再現することが基本であるから、それぞれの商品の形状等が類似するのは当然であるとして、どのような部分において創作性を見出すべきかについて説示しております。

即ち、「ガレージキット、特に、ロボット、人形などのキャラクター模型の場合、実物は存在しないので、模型の元となるのは、漫画、イラスト、アニメの画面等の平面であるところ、
造型師は、それらの各資料の中から、自分の感性で、そのキャラクター性をもっとも生かせると思えるイメージや表現を考えながら、一つ一つの部品を造りあげていく。漫画等から必ずしも当該キャラクターの大きさが判明するものではないことから、同一メーカーの同一シリーズでもサイズは一定しないことが多い。また、漫画等に現されていない箇所があることなどから、サイズのみならず、全体のバランスやフォルムについて、模型の原型制作者のセンスや独自の解釈が加わり、結果として数社が同一のキャラクターを立体化した場合でも、フォルム、バランス、サイズが微妙に異なる作品ができあがる。そして、同一キャラクターの商品が異なる造型師によって数社から発売されることがあるが、その制作者の解釈、表現等が着目されて、マニアの好みにより選択され、その商品の人気等に影響している。このように、ガレージキット業界は、キャラクターの立体化の過程における当該キャラクターの解釈や表現の差異を競う模型ジャンルであるといえ、その制作の過程において、制作者の思想・感情の表現が看られるといえる」と。



控訴審裁判所も、同旨の判断をくだしています(後記引用を参照)。

従って、このフィギュア事件を前提とする限り、6000円前後の7分の1や8分の1スケールの作品については問題なく、著作権が肯定されると見るのが無難であるといえるでしょう。もっとも、人物のフィギュアで完全ヌードのような作品に関しては、顔以外についてキャラクターとして特徴的な部分もなく、かつ、人間のポーズそのものに著作権が認められることは難しいでしょうから、工業用のマネキンと同様、著作権が認められるのは難しいかもしれません。




≪食玩事件について≫

ところが、最近、『不思議の国のアリス』のフィギュアや、動物フィギュアなどについて、著作権(著作物性)を否定する裁判例(一審・大阪地裁平成16年11月25日判決〔約1億6000万円の請求を認容〕、控訴審・大阪高裁平成17年7月28日判決〔控訴棄却〕)がでております。これとの関係は、どのように考えるべきなのでしょうか。

この食玩事件については、控訴審が、アリス人形、動物、妖怪との3種類について、異なる判断をもって解決している点が非常に参考になります。



まず、「動物シリーズ」について。

動物フィギュアは,市販の動物図鑑,鳥類図鑑等をもとに,動物の形状等を,可能な限り,実際の動物と同様に立体的に表現し,色彩も,実際の動物と同様の色,模様が付されたものであり,・・・実際の動物の形状,色彩等を忠実に再現した模型であり,動物の姿勢,ポーズ等も,市販の図鑑等に収録された絵や写真に一般的に見られるものにすぎず,制作に当たった造形師が独自の解釈,アレンジを加えたというような事情は見当たらない。

このように判断して、裁判所は、動物シリーズについては著作権を認めませんでした。



次に、「アリス人形」について。

本件アリスフィギュアの模型原型は,テニエルの挿絵に基づき,これを忠実に立体化し彩色したものである。・・・本件アリスフィギュアは,テニエルの挿絵を立体化したものである。・・・平面的に描かれたテニエルの挿絵をもとに立体的な模型を制作する過程において,制作者の思想,感情が反映されるものであるから,創作性がないわけではないが,本件アリスフィギュアは,テニエルの挿絵を忠実に立体化したものであり,立体化に際して制作者独自の解釈,アレンジがされたとはいえないことや,色彩についても,通常テニエルの挿絵に彩色する場合になされるであろう,ごく一般的な彩色の域を出ていないことを考慮すれば,本件アリスフィギュアには,テニエルの原画を立体化する制作過程において,制作者の個性が強く表出されているとまではいえず,その創作性は,さほど高くないといわざるを得ない。

このように判断して、裁判所は、アリス人形については著作権を認めませんでした。



最後に、「妖怪シリーズ」について。

本件妖怪フィギュアは,石燕の原画を忠実に立体化したものではなく,・・・随所に制作者独自の解釈,アレンジが加えられている。・・・平面的な絵画をもとに立体的な模型を制作する場合には,制作者は,絵画に描かれた妖怪の全体像を想像力を駆使して把握し,絵画に描かれていない部分についても,描かれた部分と食い違いや違和感が生じないように構成する必要があるから,その制作過程においては,制作者の想像力ないし感性が介在し,制作者の思想,感情が反映されるということができる。そして,前記認定のとおり,本件妖怪フィギュアは,石燕の原画を忠実に立体化したものではなく,随所に制作者独自の解釈,アレンジが加えられていること,妖怪本体のほかに,制作者において独自に設定した背景ないし場面も含めて構成されていること(特に,前記認定の「鎌鼬」,「河童」や,「土蜘蛛(つちぐも)」が源頼光及び渡辺綱に退治され,斬り裂かれた腹から多数の髑髏(どくろ)がはみ出している場面(甲第52号証)などは,ある種の物語性を帯びた造型であると評することさえも可能であって,著しく独創的であると評価することができる。),色彩についても独特な彩色をしたものがあることを考慮すれば,本件妖怪フィギュアには,石燕の原画を立体化する制作過程において,制作者の個性が強く表出されているということができ,高度の創作性が認められる。

このように判断して、裁判所は、妖怪シリーズについて著作権(著作物性)を認めました。




≪検討≫

さて、検討です。

動物シリーズとアリス人形とは、忠実に再現していることを理由にして著作物性を認めませんでした。この両者は殆ど同じ判断であるようにも思われますが、アリス人形については、本来、今日のキャラクターフィギュアと同様に著作物性が認められても然るべきものであると思われるだけに、別の考慮が働いたとみるべきです。おそらく、「テニエルのアリス」は、『不思議の国のアリス』の一般的イメージとなっている(誰にも独占されるべきではない)との判断があって、それゆえ、動物の忠実な再現と同様の判断構造になったのでしょう。

これに対して、妖怪シリーズについては、アニメ・漫画のキャラクターのフィギュア化と本質において変わらないはずです。ですから、本来的に、著作物性が認められて然るべきものです。ただ、アリス人形や動物シリーズとの絡みで、カプセルフィギュアは「純粋の美術の著作物」ではなく、「応用美術の著作物」と認定していることから、「純粋美術と同視し得る程度の美的創作性」の認定のために、やや詳細な認定になったのではないでしょうか。しかし、先行する京都地裁事件の判例法理からすれば、妖怪シリーズについては、そもそも、応用美術と認定したのが誤りであったのではないかと思います。





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 ■ArchiveSelection   参考資料 .   


◆ 「フィギュア事件」 .
〔裁判〕(大阪高裁平成10年07月31日判決 公刊物未搭載)


一 本件模型原型の著作物性

1  漫画のキャラクターは紙面にコマ毎に平面的に表現されそれを読者が連続的に読み取ることによって一定の容姿・姿態・装備等を備えた個性あるものとして判断し理解するものであるから、原作者が当該キャラクターに対して有しているイメージの全体像が常にすべて紙面に表現されるとは限らず、その表現されない部分は読者が自由に想像することに委ねられている。

したがって、右キャラクターを忠実に模型等の立体に制作しようとする場合には、制作者が、平面的かつ非連続的に表現された漫画の1コマ1コマから原作者の有するイメージに出来るだけ近いキャラクターの全体像を想像し、かつ、紙面に表現されない部分についても表現された部分と齟齬のないよう想像力を働かせて把握することが要請されるから、右の作業は単に紙面に表現されたものをそのまま忠実に再現するのとは異なり、その平面に表現された内容から一定の想像力・理解力・感性を働かせて統一的な立体像を制作するという創造的な作用を必然的に伴うものである。

そして、原作者が右キャラクターの細部やバランス等を具体的に指定していない以上、模型等の制作者が原画のイメージや読者の人気等をも考慮して独自の解釈の下にそのサイズやバランス等を新たに創造することになるから、その点においても二次元から三次元に転換する模型等の制作には制作者の思想や感情を表現する創作としての一面があることは否定できない。


2  本件についてこれをみるに、本件模型の制作が、同一の原画を立体化したものでありながら、他社製の模型原型と比較して独自の解釈や表現を有していることは、原判決35頁3行目から同40頁7行目までに認定のとおりである。

してみると、本件模型原型は、漫画の原画を忠実に再現した複製というに止まらず、原告の造型師としての感性や解釈に基づく独自の創作作用、すなわち、思想・感情の創作的表現としての一面を有する造形物というべきであって、二次的著作物に当たるものということができる。




◆ 「食玩事件」 .
〔裁判〕(大阪高裁平成17年07月28日判決・判タ1205号254頁以下


≪動物シリーズ≫

前記認定のとおり,本件動物フィギュアは,市販の動物図鑑,鳥類図鑑等をもとに,動物の形状等を,可能な限り,実際の動物と同様に立体的に表現し,色彩も,実際の動物と同様の色,模様が付されたものであり,極めて精巧なものであって,一定の美的感覚を備えた一般人を基準に,相当程度の美術性を備えていると評価されるものといえる。このことは,前記認定のとおり,原告の制作に係る各種フィギュアが各地の美術館等で展示され,高い評価を受けていることからも裏付けられる。

しかしながら,上記のとおり,本件動物フィギュアは,実際の動物の形状,色彩等を忠実に再現した模型であり,動物の姿勢,ポーズ等も,市販の図鑑等に収録された絵や写真に一般的に見られるものにすぎず,制作に当たった造形師が独自の解釈,アレンジを加えたというような事情は見当たらない(なお,甲第51号証によれば,本件動物フィギュアの中には,あえて実際の動物と異なる形状等を採用しているものも存在するが,これは,美術性を高めるためにデフォルメしたというよりも,主に,型抜きの都合や,カプセルに収まる寸法を確保するなどの製造工程上の理由によるものと認められる。)。したがって,本件動物フィギュアには,制作者の個性が強く表出されているということはできず,その創作性は,さほど高くないといわざるを得ない。

してみると,本件動物フィギュアに係る模型原型は,一定の美的感覚を備えた一般人を基準に,純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるとまではいえず,著作物には該当しないと解される。



≪アリスシリーズ≫

前記認定のとおり,本件アリスフィギュアは,テニエルの挿絵を立体化したものである。

本件アリスフィギュアについても,本件動物フィギュア及び本件妖怪フィギュアと同様に,極めて精巧なものであって,一定の美的感覚を備えた一般人を基準に,相当程度の美術性を備えていると評価されるものといえる。

しかしながら,本件アリスフィギュアは,平面的に描かれたテニエルの挿絵をもとに立体的な模型を制作する過程において,制作者の思想,感情が反映されるものであるから,創作性がないわけではないが,前記認定のとおり,本件アリスフィギュアは,テニエルの挿絵を忠実に立体化したものであり,立体化に際して制作者独自の解釈,アレンジがされたとはいえない(この点において,本件妖怪フィギュアとは事情が異なる。)ことや,色彩についても,通常テニエルの挿絵に彩色する場合になされるであろう,ごく一般的な彩色の域を出ていないことを考慮すれば,本件アリスフィギュアには,テニエルの原画を立体化する制作過程において,制作者の個性が強く表出されているとまではいえず,その創作性は,さほど高くないといわざるを得ない(ただし,前記認定のとおり,他にもテニエルの挿絵に彩色したものがあるが,証拠上,これらがどのような色であったかは判然としない。また,一部には背景ないし場面を含めて造型されたものもあるが(例えば「チェシャ猫」の木),これらの背景も,もともとテニエルの挿絵に描かれていたものである。)。

してみると,本件アリスフィギュアに係る模型原型は,極めて精巧なものであるけれども,一定の美的感覚を備えた一般人を基準に,いまだ純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるとまではいえず,応用美術の著作物には該当しないと解される。



≪妖怪フィギュア≫


本件妖怪フィギュアは,本件動物フィギュアと異なり,空想上の妖怪を造形したものである。

確かに,前記認定のとおり,本件妖怪フィギュアのなかには,石燕の「画図百鬼夜行」を原画とするものもある。

しかし,平面的な絵画をもとに立体的な模型を制作する場合には,制作者は,絵画に描かれた妖怪の全体像を想像力を駆使して把握し,絵画に描かれていない部分についても,描かれた部分と食い違いや違和感が生じないように構成する必要があるから,その制作過程においては,制作者の想像力ないし感性が介在し,制作者の思想,感情が反映されるということができる。

そして,前記認定のとおり,本件妖怪フィギュアは,石燕の原画を忠実に立体化したものではなく,随所に制作者独自の解釈,アレンジが加えられていること,妖怪本体のほかに,制作者において独自に設定した背景ないし場面も含めて構成されていること(特に,前記認定の「鎌鼬」,「河童」や,「土蜘蛛(つちぐも)」が源頼光及び渡辺綱に退治され,斬り裂かれた腹から多数の髑髏(どくろ)がはみ出している場面(甲第52号証)などは,ある種の物語性を帯びた造型であると評することさえも可能であって,著しく独創的であると評価することができる。),色彩についても独特な彩色をしたものがあることを考慮すれば,本件妖怪フィギュアには,石燕の原画を立体化する制作過程において,制作者の個性が強く表出されているということができ,高度の創作性が認められる。

また,本件妖怪フィギュアのうち,石燕の「画図百鬼夜行」を原画としないものについては,制作者において,空想上の妖怪を独自に造形したものであって,高度の創作性が認められることはいうまでもない。

そして,前記認定のとおり,本件妖怪フィギュアは,極めて精巧なものであり,一部のフィギュア収集家の収集,鑑賞の対象となるにとどまらず,一般的な美的鑑賞の対象ともなるような,相当程度の美術性を備えているということができる。

以上によれば,本件妖怪フィギュアに係る模型原型は,石燕の「画図百鬼夜行」を原画とするものと,そうでないもののいずれにおいても,一定の美的感覚を備えた一般人を基準に,純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるものと認められるから,応用美術の著作物に該当するというのが相当である。






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