|
◆ 「日めくりカレンダー事件」 .
〔裁判〕(知財高裁平成20年06月23日判決 平成20(ネ)10008)
・・・各配信開始日に、概ね7枚に1枚の割合で、控訴人〔原著作者〕指定の応答日前後(ただし、正確に対応しているわけではない)配信しているのであって、いわば編集著作物たる本件写真集につき公衆送信の方法によりその一部を使用しているものであり、その際に、控訴人から提供を受けた写真の内容に変更を加えたことはないものである。
そうすると、・・・被控訴人〔著作権の譲受人〕の上記配信行為が本件写真集に対する控訴人の同一性保持権を侵害したと認めることはできない(毎日別の写真を日めくりで配信すべきか否かは、基本的には控訴人と被控訴人間の契約関係において処理すべき問題であり、前記2認定の事実関係からすると、そのような合意がなされたとまでみとめることもできない)。
◆ 【余談】 契約についての甘い認識に、ご注意を .
実際問題として、本件の裁判例では、契約に対する甘い認識が、「編集著作物の著作者としての同一性保持権」が侵害されたなどという、あまり耳にしない主張に繋がったのではないかと思われます。クリエーターは、自分の作品が自分の思う形で利用されない場合、「著作権侵害だ!」と主張しがちですが、その心情を慮ることは当然として、代理人弁護士は、その心情に流されないことが大事です。然るに、本件では、代理人が、依頼人の願望や主張に引きずられて、為すべき法的主張を怠り、真の争点を見失ってしまったのではないかと感じます。
本件では、(控訴審)裁判所も括弧書きでわざわざ付言したように、「毎日別の写真を日めくりで配信すべきか否かは、基本的には控訴人と被控訴人間の契約関係において処理すべき問題であり」、主戦場は、この「毎日更新による使用態様」が契約条件となっていたか否かに狙いを定めるべきだったのです。平たく言えば、無理して著作権の土俵で争うのではなく、契約法の土俵で争うべきだったのです。
一審地裁でも、「本件事案の紛争の実体は,原告が,本件写真集の発表の手段として,本件サイトにおいて,本件写真集中の花の写真が『日めくりカレンダー』として画像配信されることを期待していたのに対して,被告による本件配信行為の内容が結果的にその期待に添うものではなかったという行き違いに端を発したものであることに鑑み当裁判所はまず争点3
(本件配信行為について,原告の明示又は黙示の同意があったか)について判断することが相当であると考える」と指摘されているところです。
この観点からみると、写真家(原告)側には、お金のことを気にする主張が強く現れ過ぎているように感じです。
例えば、第一弾の本件「花の写真」の評判次第によっては、第二弾として「風景写真」で同様の企画をするとの話であったと事実認定されている中で、毎日更新ではなく週一更新であるなら、第二弾の「風景写真」を購入するか、第一弾の「花の写真」の代金を増額改訂してくれとの要望が見え隠れするのは、如何なものでしょうか。このような事情は、上手く処理しておかないと、当初の契約内容に関して、写真家にとって有利な認定には結びつかないものであると思います。
ともあれ、本事案の教訓を、クリエーターの立場に立ってアドバイスするとすれば、どうしても譲れないコンセプトがあるのであれば、それは契約書上必ず明記しておくこと、です。
|
Welcome to
“The Creator'sRight”
拍手で、あなたの声を
届けます!
|