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◆ 「似通った映像の無断使用 パチンコやまと事件」 【裁判】【著作権】【アイデア/表現の二分論】
〔参考〕「『ヤマト』に似た映像使用、パチンコ機メーカーと和解成立」(読売新聞 2008年12月15日)
[概要]
アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の登場人物や戦艦と似た映像をパチンコ機などに無断使用されたとして、映像プロダクション「東北新社」(東京)が、パチンコ機メーカー「三共」(同)など5社に損害賠償などを求めた訴訟の控訴審で、和解が成立した。
和解条項は、被告側が和解金計2億5000万円を支払う内容という。
なお、1審・東京地裁判決は2006年12月、「パチンコ機に使われているキャラクターは、『ヤマト』のものとは違う」として、請求を棄却していた。
[解説]
一審(東京地裁平成18年12月27日 平成17(ワ)16722)では、原告の10億円の請求は全面的に退けられました。
前提論点として、被告は、映画製作者とはいえず(103頁参照)、翻案権の譲渡についても「特掲」していたとは言えないので取得していないとされながらも(114頁参照)、肝心の「翻案の有無」(要するに、ここまでやったらダメといえるようなパクリか)の争点で、(後記判決文抜粋のように)翻案であることが否定されていました。
これは、「アイデアの域を出ない」という著作権の初歩的なところを示したものです。
この事案におけるその結論自体の当否はともかくとして、「アイデア/表現の二分論」は、著作権を考える上で基礎中の基礎なので知っておいて損はありません。判決文は長大なので、後記抜粋を読んでマスターしてみてください。
なお、不正競争防止法に関する主張も退けられています。派生的な訴え(平成16(ワ)13725)も、同日付で退けられています。
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(平成17(ワ)16722 東京地裁平成18年12月27日)
■ 「アイデア/表現の二分論」について 【一審判決】(123−124頁)
本件映画が制作された時点で,先端に穴の空いた飛行物体が宇宙を航行している様子を描いた画像,先端に穴の空いた戦艦が海上を航行している様子を描いた画像,先端部から光線を発している飛行物体を描いた画像,及び宇宙空間を暗青色に描く画像が存在していることが認められ,このことから,先端部に存在する発射口から光線を発する飛行物体が暗青色の宇宙空間を航行するという映像や,そのような飛行物体が先端部の発射口から光線を発射する前段階として,発射口部分が発光することを描いた映像も,特に目新しい表現ということはできない。また,飛行物体の先端部に設置された発射口が発光するのを描く際に,その発射口を中心に描くことも,ありふれた表現方法である。そして,戦艦が宇宙空間を飛行すること自体は,アイデアに属し,また,海中又は宇宙空間を艦船又は飛行体が進んで行くという表現は,上記同様,特徴あるものとはいえない。
したがって,上記両映像の上記共通点のうち,宇宙空間を背景にして,戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光している様子が中心に描かれている部分は,両映像にとって特徴的な表現ということはできず,この点が共通することが,両映像の同一性の判断において,大きな意味を有するということはできない。そして,宇宙空間を背景にして,戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光しているという部分の具体的な表現形式については,前記(ア)のとおり,大きく異なる。また,発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していくという部分は,ありふれた表現ということはできないが,その具体的な表現形式は,前記(ア)のとおり,大きく異なっている。
さらに,その他の表現形式も,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく異なっている。
以上の事実を総合考慮すると,被告映像対比表2正面バージョン部分と本件映画対比表2部分との間に,同一性は認められないというべきである。
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