■TopicNavigator .
≪Partnership≫ ------------
|
|
■ ArchiveSelection ニュースで考えるクリエーターの権利. Listトップへ
|
◆ 「幽霊会社と職務著作 カフェ・リトルウィッシュ、まじかる・ている事件」 【著作権の帰属】【職務著作】
〔裁判〕(東京地裁 平成20(ワ)12683 2009年6月19日判決)
[概要]
ゲームソフト(恋愛シミュレーションゲーム)の著作権の帰属に関して、PC用ゲームソフトの名目上の発売元となったデジタルワークス社が、実際のゲーム制作を担当したオークス社などとの間で争っていた裁判の判決があった。
デジタルワークス社(発売元)は、オークス社(制作元)などに対して、ゲームソフトを移植して販売等をしたことが著作権(翻案権、二次的著作物に係る複製権)を侵害するものであるとして、ゲームソフトの販売・頒布の差止め並びに在庫品の廃棄を求めるとともに、不法行為による損害賠償を請求していた。
経緯としては、オークス社が、各PCソフトを家庭用ゲーム機用ソフト(ドリームキャストと、PS2)に複製・移植し、タイトーへと販売(少なくとも1039万0400円、及び4660万6480円)したとされる。これについて、デジタルワークス社が、損害合計1879万9064円(得べかりし利益1709万9064円、弁護士費用170万円)の支払いなどを求めていた。
裁判所は、デジタルワークス社の著作権を否定し、その請求を棄却した。
[解説]
訴状などの主張によると上記のようなニュースとなるわけですが、実際のところは、会社のブランドイメージなどを保とうとして休眠会社(デジタルワーク社)の社名を利用したことに起因した、権利紛争だったようです。
即ち、判決文からは詳細には分かりませんが、実体のある会社は、制作元のオークス社だけのようです。
原告となった名目上の発売元デジタルワークス社は、そもそも、いったん事業に失敗して幽霊会社となっていたものの、本件ソフトの販売に際して、ソフ倫の加盟員であることに着目して、販売会社とされただけのようです。当時、デジタルワークス社の社長でもある実質上の原告は、被告会社の代表者と知り合いで、その旧知により被告会社に雇われ、(ゲーム制作そのものには関与しない)経理などを担当していたようです。
また、小売を担当するワンピース社(販売元)にしても、その設立目的、事務所所在地及び役員構成がオークス社と一致している点に現れているように、これまたペーパー・カンパニーに過ぎず、いずれも、制作元であるオークス社の対外的なイメージを損なわせないなどの目的で間に挟まれていただけの【名ばかり会社】だったようです。
具体的には、
@オークスがゲームを(開発費を負担して)制作し、
Aデジタルワークスがそれを開発委託していたことにして、発売元となり、
Bワンピースが販売元(小売)として、デジタルワークスから一括購入し、消費者へと販売する、
という【枠組み】でした(後記判決文参照)。
おそらく、これらA及びBのルートは法律上の扱いとしてだけの話であり、現実には、何らの在庫品の移動や、作業という点では、デジタルワークス社やワンピース社が存在しなくとも変わらなかったのではないかと思います。
以上のような事実認定を前提にすれば、当然の判決であったと言えるでしょう。
判決的には、目新しいものはありません。「法人の代表者であっても職務著作の対象になり得る」との法理を介して、あとは、「著作権がどこに帰属していたか」について具体的な事実認定の問題で解決しております。実際問題として、何ら実体のない会社で、名前だけ貸したとの認定が実質的に為されている時点で、そのような幽霊(休眠)会社の職務として制作したということにはならないでしょうから、結論は出ています。従って、事例判例のひとつに過ぎません。
この裁判例からは、建前上の法形式よりも、結局のところは、実体が重視される、即ち、その中味がどのような実態であったのかが大切である、ということが理解できるのではないでしょうか。ゲーム制作の業界では、こういったややこしい手口が、時に、便宜的に使われるそうですので、参考にしていただければと思います。
なお、判決文で、ゲーム移植を「翻案」と括弧書きで記載されています。
【参考サイト】
◆商品サイト PrincessSoft
●販売業者 株式会社オークス
●運営責任者 井上智元
●所在地 東京都千代田区外神田4-8-5クレイン末広ビル6階
●TEL 03-5209-6894(平日午後2時〜7時まで)
●メールアドレス oaks-webshop@oaks-soft.co.jp
●URL http://www.oaks-soft.co.jp/princess-soft/
(以上の表記は、こちら)
◆商品ページ
〆 「Cafe・LittleWish」
「小さな願い」がかなう、ちょっぴり不思議なカフェの不思議なストーリー
〆 「まじかる☆ている〜ちっちゃな魔法使い〜」
魔法学院プリクラス、運命のいたずらで転校してしまった貴方、ここで好きな娘を探せますか?
|
(東京地裁 平成20(ワ)12683 2009年6月19日判決)
■ 「枠組み」について
事実上,アダルトゲームソフトを発売するにはソフ倫に加盟し,商品にソフ倫から交付される「ソフ倫シール」を貼付しなければならない。被告オークスは,プレイステーション2用のゲームソフトを主力商品としており,これも一定の性的表現を含むものではあったが,プレイステーション2のライセンス元であるSCE社による規制が厳しいため,比較的穏当な内容のものであり,今後,被告オークスにおいてアダルトゲームソフトを手がけることが表沙汰になれば,同社のイメージが悪化するのではないかという懸念があった。他方,原告は,ゲームソフトを制作,販売する能力やノウハウを有していなかったが,ソフ倫に加盟していたことから,アダルトゲームソフトの発売元になることができた。
そこで,原告と被告オークスが協議した結果,被告オークスがアダルトゲームソフトを制作し,原告がその発売元となり,ワンピースが原告からそのパソコン用ゲームソフトを一括して仕入れて(又は委託を受けて)販売するという枠組みで事業を展開することが取り決められた。
■ 「職務著作」の認定について
本件ソフト1及び2は,被告オークスの代表取締役かつプログラマーとしてゲームソフト開発作業を担当していたCが,被告オークスの発意に基づき,その職務として作成したものと認めることができるから,被告オークスが,本件ソフト1及び2の著作者であり,これらの著作権を原始的に取得したものということができる。
この点につき,原告は,Cに対し本件ソフト1及び2の開発に係る報酬を支払ったとか,本件ソフト1及び2のプログラムの開発,シナリオや音楽の作成のためのスタッフを準備し,これらのスタッフに対する報酬もすべて支払ったなどの事実を指摘して,本件ソフト1及び2が原告の職務著作であると主張し,C作成の陳述書(甲18)にはこれに沿う記載部分がある。
しかし,本件において,原告とCとの間で締結された雇用契約又はこれに相当する契約に関する書面や,原告からCその他のスタッフに報酬又は賃金が支払われたことを示す客観的資料が何ら証拠として提出されておらず,また,本件ソフト1及び2が作成された当時の原告の取締役であったBは,当時原告の業務に従事していた者はB1人であり,Cは原告の役員でも従業員でもなかった旨の証言をしていることに照らすと,Cの上記陳述は採用することができず,ほかにCが原告の業務に従事する者として本件ソフト1及び2を作成したとの事実を認めるに足りる証拠はない。したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
本件ソフト1及び2のパッケージには,発売元として原告の商号が記載され,また,Cは「デジタルワークスのC」と名乗ってシナリオ等の外注をしたり,販促イベントに参加するなどしていたことが認められる(甲14,15,18,証人B)が,これらは,本件ソフト1及び2の発売元を原告とする上記(1)ウの枠組みと整合させるために採られた便宜的な措置にすぎないものと認められ,これらの事実は上記認定を左右するものではない。
|
|
Listトップへ
|
|
|