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◆ 「著名人の氏名・肖像の無許諾利用  ピンク・レディーdeダイエット事件」 【パブリシティ権】
  〔参考〕「元ピンク・レディーまた敗訴 週刊誌写真掲載で知財高裁が請求棄却」(MSN産経 2009年08月27日)
  〔裁判〕(平成20(ネ)10063 知財高裁平成21年08月27日判決
  〔原審〕(平成19(ワ)20986 東京地裁平成20年07月04日判決


[概要]

ダイエット法として紹介された週刊誌の記事の中で、元ピンク・レディーの二人の当時の写真が無断掲載された。これについて、元ピンク・レディー側は、発行元の光文社(東京)に損害賠償を求めていた。知財高裁は、1審に続いてその請求を退けた。


本件記事は、ピンク・レディーの曲に合わせてその振り付けをし、親子でコミュニケーションを図りながらするダイエットを紹介したものである。掲載雑誌の読者層が子供時代にピンク・レディーに熱狂した女性ファン層と重なり、また、小さい子供を抱える主婦層となっていることに着目してのことである。

当時(平成18年秋ころ)、ダイエットに興味を持つ女性、特に主婦らを中心として、ピンク・レディーのヒット曲に合わせてダンスを踊ってダイエットをすることが流行していた。

平成19年2月13日、週刊誌「女性自身(2月27日号)」において、「踊って脂肪を燃焼! ピンク・レディーdeダイエット」などの見出しで振り付けを紹介し、2人の写真14枚も掲載した。


この写真の使用について、ピンク・レディー側は、「使用者が『記事の一部として必要な範囲である』などと言い逃れしさえすれば、パブリシティ権侵害は成立しないこととなり、実質的に紹介記事等を装った脱法的な肖像等の無断使用の道を開くこととなってしまう」と主張。

これに対し、光文社側は、写真集、ブロマイド、カレンダーのような商品については別論としながらも、「マスメディアにおいて芸能人等を紹介し、また、批判・論評すれば、それはその芸能人等に関心を持つものに対して何らかの意味で販売促進等の効果を持つが、それは社会の関心の対象になる立場にあることの当然の反映であり、そのような紹介等の表現活動の自由の領域を『パブリシティ権』の名の下に侵してはなら(ない)」と反論。


裁判所は、許諾を得て撮影された写真を、後日、別目的で再利用することについて、たとえ、その際に改めて許諾を得ていなかったとしても、「社会的に著名な存在であった控訴人らの振り付けを本件記事の読者に記憶喚起させる手段として利用されているにすぎない」と認定し、「自らの氏名・肖像を排他的に支配する権利が害されているものということはできない」と結論づけた。




[解説]

本件は、いわゆるパブリシティ権の侵害に基づいて186万円の支払いのみを求めた損害賠償請求事件のようです。差止めや、廃棄・回収については、掲載雑誌がばら撒かれた後であった為か、請求されていません。


本件を理解するうえでのポイントは、(1)使用された写真が、元々は、その許諾を得て撮影されたものであること、そして、(2)後日、その写真の正当な権利者が、当初の撮影目的とは別の目的での利用を企図したものであること、です。つまり、「写真の著作権」の問題はクリアーされていることに、留意する必要があります。

トラブルになったのは、(3)その再利用について、被写体の許諾を改めて得なかったこと、によります。そこで、パブリシティ権が持ち出されたといえます。

また、注意すべき点としては、(4)記事に付随するものとしての写真利用であること、及び、(5)掲載のスタイルや大きさなどからして、グラビアのように、それ自体を鑑賞の目的とする利用方法ではないこと、です。パブリシティ権の侵害の有無ともオーバーラップしますが、「引用」の要件に引き付けて考えることもできる部分です。

以上を踏まえて、判決では、利益較量における判断要素を一般的に説示した上、具体的には、「ピンク・レディーの楽曲に合わせて踊ってダイエットをするという本件記事に関心を持ってもらい,あるいは,その振り付けの記憶喚起のために利用」であったなどと認定し、パブリシティ権の侵害を否定しています。




また、この裁判では、実質的な価値判断が示されており、注目されます。

即ち、「著名人は,自らが社会的に著名な存在となった結果として,必然的に一般人に比してより社会の正当な関心事の対象となりやすいものであって,正当な報道,評論,社会事象の紹介等のためにその氏名・肖像が利用される必要もあり,言論,出版,報道等の表現の自由の保障という憲法上の要請からして,また,そうといわないまでも,自らの氏名・肖像を第三者が喧伝などすることでその著名の程度が増幅してその社会的な存在が確立されていくという社会的に著名な存在に至る過程からして,著名人がその氏名・肖像を排他的に支配する権利も制限され,あるいは,第三者による利用を許容しなければならない場合があることはやむを得ないということができ(る)」という、一般論。

そして、実際的な問題として、【許諾なくしてその写真等が利用されても仕方ないと言えるのか】については、即ち、「著名人の肖像写真が当該著名人の承諾の下に頒布されたものであった場合には,その頒布を受けた肖像写真を利用するに際して,著名人の承諾を改めて得なかったとして,その意味では無断の使用に当たるといえるときであっても,なおパブリシティ権の侵害の有無といった見地からは,その侵害が否定される場合もある」と。



なお、著名人のパブリシティ権の侵害について正面から争われた本件において、両当事者の主張はいずれも一面的過ぎるとして排斥され、中間的な判断が下されています。弁護士が代理人である以上、互いに都合の良い主張のみをするので、ある意味当然の結果ですが。




平成20(ネ)10063 知財高裁平成21年08月27日判決
■ 無許諾再利用について(15頁以下)


本件写真は,控訴人らの芸能事務所等の許可の下で,被控訴人側のカメラマンが撮影した写真であって,被控訴人において保管するなどしていたものを再利用したものではないかとうかがわれるが,その再利用に際して,控訴人らの承諾を得ていないとしても,前記したとおり,社会的に著名な存在であった控訴人らの振り付けを本件記事の読者に記憶喚起させる手段として利用されているにすぎない。

以上を総合して考慮すると,本件記事における本件写真の使用は,控訴人らが社会的に顕著な存在に至る過程で許容することが予定されていた負担を超えて,控訴人らが自らの氏名・肖像を排他的に支配する権利が害されているものということはできない。



■ いわゆるパブリシティ権に係る検討(11頁以下)


氏名は,人が個人として尊重される基礎で,その個人の人格の象徴であり,人格権の一内容を構成するものであって,個人は,氏名を他人に冒用されない権利・利益を有し(最高裁昭和58年(オ)第1311号昭和63年2月16日第三小法廷判決・民集42巻2号27頁参照),これは,個人の通称,雅号,芸名についても同様であり,また,個人の私生活上の自由の1つとして,何人も,その承諾なしに,みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有するもの(最高裁昭和40年(あ)第1187号昭和44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁参照)であって,肖像も,個人の属性で,人格権の一内容を構成するものである(以下,これらの氏名等や肖像を併せて「氏名・肖像」という。)ということができ,氏名・肖像の無断の使用は当該個人の人格的価値を侵害することになる。

したがって,芸能人やスポーツ選手等の著名人も,人格権に基づき,正当な理由なく,その氏名・肖像を第三者に使用されない権利を有するということができるが,著名人については,その氏名・肖像を,商品の広告に使用し,商品に付し,更に肖像自体を商品化するなどした場合には,著名人が社会的に著名な存在であって,また,あこがれの対象となっていることなどによる顧客吸引力を有することから,当該商品の売上げに結び付くなど,経済的利益・価値を生み出すことになるところ,このような経済的利益・価値もまた,人格権に由来する権利として,当該著名人が排他的に支配する権利(以下,この意味での権利を「
パブリシティ権」という)であるということができる。



もっとも,著名人は,自らが社会的に著名な存在となった結果として,必然的に一般人に比してより社会の正当な関心事の対象となりやすいものであって,正当な報道,評論,社会事象の紹介等のためにその氏名・肖像が利用される必要もあり,言論,出版,報道等の表現の自由の保障という憲法上の要請からして,また,そうといわないまでも,
自らの氏名・肖像を第三者が喧伝などすることでその著名の程度が増幅してその社会的な存在が確立されていくという社会的に著名な存在に至る過程からして,著名人がその氏名・肖像を排他的に支配する権利も制限され,あるいは,第三者による利用を許容しなければならない場合があることはやむを得ないということができ,結局のところ,著名人の氏名・肖像の使用が違法性を有するか否かは,著名人が自らの氏名・肖像を排他的に支配する権利と,表現の自由の保障ないしその社会的に著名な存在に至る過程で許容することが予定されていた負担との利益較量の問題として相関関係的にとらえる必要があるのであって,その氏名・肖像を使用する目的,方法,態様,肖像写真についてはその入手方法,著名人の属性,その著名性の程度,当該著名人の自らの氏名・肖像に対する使用・管理の態様等を総合的に観察して判断されるべきものということができる。

そして,一般に,著名人の肖像写真をグラビア写真やカレンダーに無断で使用する場合には,肖像自体を商品化するものであり,その使用は違法性を帯びるものといわなければならない。

一方,
著名人の肖像写真が当該著名人の承諾の下に頒布されたものであった場合には,その頒布を受けた肖像写真を利用するに際して,著名人の承諾を改めて得なかったとして,その意味では無断の使用に当たるといえるときであっても,なおパブリシティ権の侵害の有無といった見地からは,その侵害が否定される場合もあるというべきである。



【ピンク・レディー側の主張に関して】

この点につき,控訴人らは,パブリシティ権侵害の判断基準として,「当該著名な芸能人の名声,社会的評価,知名度等,そしてその肖像等が出版物の販売促進のために用いられたか否か,その肖像等の利用が無断の商業的利用に該当するかどうか」によるべきであると主張する。

しかしながら,出版事業も営利事業の一環として行われるのが一般的であるところ,正当な報道,評論,社会的事象の紹介のために必然的に著名人の氏名・肖像を利用せざるを得ない場合においても,著名人が社会的に著名な存在であって,また,あこがれの対象となっていることなどによって,著名人の氏名・肖像の利用によって出版物の販売促進の効果が発生することが予想されるようなときには,その氏名・肖像が出版物の販売促進のために用いられたということができ,また,営利事業の一環として行われる出版での著名人の氏名・肖像の利用は商業的理由ということができる。そして,控訴人ら主張に係る上記基準における「出版物の販売促進のために用い」ることや「商業的利用」につき,このような場合をも含むものであるとすると,そのような基準に依拠するのでは,出版における正当な報道,評論,社会的事象の紹介のための著名人の氏名・肖像の利用も許されない結果となるおそれも生じることからしても,控訴人らの主張は一面的に過ぎ,採用し得ないというべきである。



【光文社側の主張に関して】

他方,被控訴人は,パブリシティ権侵害の判断基準として,「その使用行為の目的,方法及び態様を全体的かつ客観的に考察して,その使用行為が当該芸能人等の顧客吸引力に着目し,専らその利用を目的とするものであるといえるか否かにより判断すべきである」と主張する。

しかしながら,このうち,その使用行為が「専ら」当該芸能人等の顧客吸引力の利用を目的とするか否かによるべきとする点は,出版等につき,顧客吸引力の利用以外の目的がわずかでもあれば,そのほとんどの目的が著名人の氏名・肖像による顧客吸引力を利用しようとするものであったとしても,「専ら」に当たらないとしてパブリシティ権侵害とされることがないという意味のものであるとすると,被控訴人の主張もまた,一面的に過ぎ,採用し得ないというべきである。



■ 一審での説示(14頁以下)


人は,著名人であるか否かにかかわらず,人格権の一部として,自己の氏名,肖像を他人に冒用されない権利を有する。人の氏名や肖像は,商品の販売において有益な効果,すなわち顧客吸引力を有し,財産的価値を有することがある。このことは,芸能人等の著名人の場合に顕著である。この財産的価値を冒用されない権利は,パブリシティ権と呼ばれることがある。

他方,芸能人等の仕事を選択した者は,芸能人等としての活動やそれに関連する事項が大衆の正当な関心事となり,雑誌,新聞,テレビ等のマスメディアによって批判,論評,紹介等の対象となることや,そのような紹介記事等の一部として自らの写真が掲載されること自体は容認せざるを得ない立場にある。そして,そのような紹介記事等に,必然的に当該芸能人等の顧客吸引力が反映することがあるが,それらの影響を紹介記事等から遮断することは困難であることがある。

以上の点を考慮すると,芸能人等の氏名,肖像の使用行為がそのパブリシティ権を侵害する不法行為を構成するか否かは,その使用行為の目的,方法及び態様を全体的かつ客観的に考察して,その使用行為が当該芸能人等の顧客吸引力に着目し,専らその利用を目的とするものであるといえるか否かによって判断すべきである。



なお,原告らも被告も,通常モデル料が支払われるべき週刊誌等におけるグラビア写真としての利用と同視できる程度のものか否かの基準に言及するが,この基準ないし説明は,東京地裁平成16年7月14日判決(判例タイムズ1180号232頁〔ブブカアイドル第一次事件)の事実関係の下では適切なものである〕としても,他の事実関係の事件にそのまま適用することができるものではないことに注意を要する。








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