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◆ 「漫画の美術的価値  ZatchBll事件」 【原画原稿の所有権・価値】
  〔参考〕「『金色のガッシュ』作者と小学館和解 原稿紛失を謝罪…255万円」(MSN産経 2008年11月11日)
  〔参考〕「小学館、損害賠償訴訟裁判」(雷句誠のBlog)


[概要]

漫画の原画原稿を出版社が紛失したとして、漫画家が出版社に対して、原画の所有権侵害に基づく損害(150万円)及び慰謝料(150万円)の賠償を求めていた裁判が、和解で落着した。

弁護士費用の賠償(30万円)を含めて330万円の請求に対して、和解金は255万円。

なお、訴状によれば、「契約当初の原告の原稿料は、白黒原稿が1ページ1万円(後に小学館漫画賞受賞により1万3000円にアップした)、カラー原稿が1ページ1万4000円(その後1万7000円にアップした)であった(いずれも口約束)」ところ、「本件原稿の紛失に際し、被告〔出版社〕が提示した賠償額は、1枚に付き、原稿料の3倍」だった。


紛失したカラー原稿5点について、雷句氏は、「(和解金の)額の中には漫画の美術的価値も含まれていると思う。意義のある裁判だった」とコメントした。




[解説]

雷句さんのBlogで、比較的詳細に事件の経緯や裁判の流れが公開されていますので、ご関心のある方はそちらを参照してください。例えば、訴状、和解の結論、共同宣言案、小学館の基本的な姿勢など。

そのほかにも色々とメッセージ性のある記事です。

例えば、「本訴は、漫画家が、編集者、出版社から、あまりにも対等でない扱いを受け続けていることに対して、一種の警鐘を鳴らすもの」であり、そして、「漫画界の世界で成功を収めた原告の、後に続く新人の漫画家たちへの最低限の責任として、『雷句誠がこの金額で納得して、君が文句を言うのはおかしいだろう?』と何も言えなくしてしまう状況をつくってしまうことは絶対に避けなければならず、本訴はその意味では、後輩たちへの原告の使命でもある」(訴状「6」)とのメッセージが記されています。

この体験記は、同種の問題を抱える方の指針になると思います。




(雷句氏のBlog「和解成立。そして・・・」2008/11/11 20:40)
■ 和解条項


1 被告は、原告に対し、原告所有の漫画原稿を紛失したことにつき、謝罪する。
2 被告は、原告に対し、本件和解金として金255万円の支払義務あることを認める。
3 被告は、原告に対し、前項の金員を平成20年12月15日限り、原告代理人「◯◯◯◯◯」名義の三井住友銀行◯◯支店普通預金口座(口座番号◯◯◯◯◯◯)に振り込む方法により支払う。
4 原告は、その余の請求を放棄する。
5 原告及び被告は、原告と被告との間には、本件に関し、本件和解条項に定めるほかに何らの債権債務がないことを相互に確認する。
6 訴訟費用は、各自の負担とする。 


                                               以  上


■ 共同提言案


(1) 創作者の創造性が作用する社会活動においては、関係者が創作者個々人の創造性・オリジナリティに敬意を払い、これを尊重する風土を確立することによって、文化の健全な発展の基礎が形成される。殊に、漫画出版の場合には、漫画の原稿そのものが商品化するのに不可欠のものであり、かつ、漫画のストーリーと相俟って、漫画そのもののもつ視覚的印象に美術的価値があるのであって、これらに携わる者は、これらの価値を見いだした創作者の意向を十分に尊重する姿勢が必要である。


(2) 我々は、漫画原稿が出版社において扱われる場合には、法律上又は倫理上、次のようなルールが守られなければならないと考える。

一 出版社は漫画原稿を預かった場合には、その原稿の価値を尊重し、善良なる管理者としての注意義務を持って、それを管理しなければならない。

二 出版社が預かった原稿については、出版できる状態、つまりポジフィルム化した段階で、速やかに漫画家に返却し、必要以上に原稿を管理してはならない。

三 (この項目には賠償金の倍率設定) 








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