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◆ 「酷似グッズが出回ったら? ひこにゃん事件」 【キャラクター商品】【著作権】【商標権】
〔参考〕「ひこにゃん:酷似グッズ出回る 彦根市が販売中止要請」(毎日新聞 2009年07月28日)
[概要]
滋賀県彦根市が、著作権と商標権を持つ人気キャラクター「ひこにゃん」に酷似したキャラクターグッズが出回っているとして、市内の販売業者6社に、「ひこねのよいにゃんこは、市が著作権と商標権を持つひこにゃんと酷似しており、市の著作権及び商標権を違法に侵害する」などと販売中止の要請文書を出した。
もっとも、この酷似商品は、ひこにゃんを考案した作家が作った「ひこねのよいにゃんこ」であり、要は、著作者と著作権者との間で権利処理に不備があったようである。
市は原作者側に対しても、「にゃんこの使用は絵本などに限られる」として、場合によっては法的措置も検討するとしているが、原作者の代理人の弁護士は「原作者はひこにゃんの3図柄以外は自由に創作できる」と話し、議論は平行線のままだという。
[解説]
この手の紛争は、起こるべくして起こったともいえます。
このキャラ、「擬人化猫が、甲冑兜を被っている」というのがアイデアの核心部分ですが、著作権というのはアイデアそれ自体を保護するものではありませんので、「擬人化猫が、甲冑兜をかぶっている」という別キャラを作ること自体には、何らの問題もないのです。
では、著作権でどのようなものが保護されるのかと言えば、具体的な表現部分です。ところが、酷似キャラとされたゆるキャラの具体的なデザインを見ても、猫の擬人化としてはありふれていますし、兜も全くの同一ではなく、かつ、ありふれたデザインの範囲内ともいえるものでしかありません。そして、「ありふれた表現」というものは、みんなが使えるものとして、著作権法では保護されないのです。
従って、完全な同一品でもない限り、著作権が及ぶかどうかについては、争う余地がたぶんにあるわけでした。
また、市側(著作権者)は、商標権の存在を持ち出していますが、これまた見当ハズレなところがあります。
まず、登録されている権利は、標準文字登録としての「ひこにゃん」(【登録番号】第5104693号 【登録日】 平成20年(2008)1月11日)と、図柄の別商標(下図、【登録番号】
第5104692号 【登録日】 平成20年(2008)1月11日)の二つです。
ところが、文字商標や二次元の平面商標が立体のお人形と全くの別物というのは法律上の定めですので(その為の立体商標制度があるのです)、標準文字登録や平面商標の商標権の侵害を主張するのは、商標法の初歩すらも知らないことを露呈しています。
まして、商標上の権利というのは、売り物にその商標を貼り付けるなどして利用することに対する権利なので、商標そのもののお人形を売ることは、「商標としての使用には当らない」として、これまた権利が及ぶものでないケースが多いのです。
むしろ、本件でのキャラクターグッズの独占権保護の観点からは、商標登録するぐらいなら、意匠登録の方がマシなような気がします。
一般に、弁護士は商標法などには通じていませんので、現時点では、とりあえず、依頼人のおおまかな主張をなぞっているだけ、という段階なのではないのでしょうか。著作権で決着がつかない場合、おそらくは、「レンタルお姉さん」事件のように、いずれ不正競争防止法の話に流れていくような気がします。
なお、【商標権の侵害】を理解するうえでは、「朝バナナ事件」の記事なども参照してください。
(特許庁の公開データベースより、登録商標の図案)
【関連記事】
⇒ 「ひこにゃん悩ますそっくりキャラ なんと同じ原作者」(朝日新聞 2009年7月28日 10時06分)
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