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◆ 「そのタイトルは、商標権の侵害? 朝バナナ事件」 【商標権】【不正競争】
〔裁判〕(平成21(ワ)657 東京地裁平成21年11月12日判決)
[概要]
ぶんか社と、データハウスとの間で、「朝バナナ」というタイトルをめぐって争われていた訴訟の判決があった。
ぶんか社は、「朝バナナ」の商標権(第5171201号)を有し、また、『朝バナナダイエット』などの書籍も出版している。他方、データハウス社からも、『朝バナナダイエット成功のコツ40』
(著者 ぽっちゃり熟女ゆっきーな)が出版されている。
ぶんか社は、当該書籍のタイトルに「朝バナナ」の語句が使用されていることが商標権を侵害する、あるいは、不正競争行為であるとして、データハウスに対して書籍の販売差止・廃棄及び損害賠償を請求していた。
裁判所は、商標権侵害について、「被告書籍のカバーや表紙等における被告標章の表示は,被告標章を,単に書籍の内容を示す題号の一部として表示したものであるにすぎず,自他商品識別機能ないし出所表示機能を有する態様で使用されていると認めることはできないから,本件商標権を侵害するものであるとはいえない」として、その侵害を否定した。
また、不正競争行為についても、上記とほぼ同様の理由を繰り返して、否定した。
[解説]
最近、「ひこにゃん事件」や「レンタルお姉さん事件」など、商標権侵害の主張を耳にする機会が増えてきました。
ところが、その商標権の主張が、実は失当である場合が意外に多くあります。
これは、弁護士が、商標法をはじめとした知的財産法に不慣れなことに起因しているように思います。訴訟となれば、普通は弁護士へ相談することになるのですが、問題は、知的財産法に詳しい弁護士は、まだまだ不足がちだということです。その結果、見当違いなかたちで商標権の侵害を持ち出している事案もあるように感じます。
弁護士が真に理解して、商標権を便宜的に持ち出しているのなら良いのです。しかし、そうでなく、「登録商標がある⇒商標権の侵害⇒差止、不法行為」という感覚で話をされているのだとしたら、痛い目にあうのはクライアントですので注意してください。
実際、本判決は、以上のような商標権の侵害について典型的な勘違いをしたまま訴訟に突っ走ったのではないかと疑われるケースです。
本判決では、比較的分かりやすく【商標権の侵害】というものについて説示されています。
ひと言で言えば、商標というのは、販売元を示す為のものです。その為、本のタイトルといったものに使用されても、普通はそのタイトルを販売元と関連付けませんので、商標権を侵害しているとは言えないのです。
下記引用部分を参考に、商標法の一端を理解するとともに、相談先の弁護士が正しく商標権を理解しているかを判断する指標にもしてみてください。
また、同系列の「ひこにゃん事件」や「レンタルお姉さん事件」なども、理解が早くなるのではないでしょうか。
なお、アマゾンで「朝バナナ」とキーワードを入力すれば、両書籍の表紙部分を見ることができます。
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(平成21(ワ)657 東京地裁平成21年11月12日判決)
■ 「商標権の侵害」について
商標の使用が商標権の侵害行為であると認められるためには,登録商標と同一又は類似の第三者の標章が,単に形式的に指定商品又はこれに類似する商品等に表示されているだけでは足りず,その商品の出所を表示し自他商品を識別する標識としての機能を果たす態様で使用されていることを要するものと解すべきである。
前記1で認定したところによれば,被告書籍の内容は,「朝バナナダイエット」というダイエット方法を実行し,ダイエットに成功するために,著者が成功の秘訣と考える事項を40項目挙げるというものであり,題号の表示も,被告書籍に接した読者において,書籍の題号が表示されていると認識するものと考えられる箇所に,題号の表示として不自然な印象を与えるとはいえない表示を用いて記載されているといえる。
そうすると,被告書籍に接した読者は,「朝バナナ」を含む被告書籍の題号の表示を,被告書籍が「朝バナナダイエット」というダイエット方法を行ってダイエットに成功するための秘訣が記述された書籍であることを示す表示であると理解するものと解される。
なお,被告書籍の題号のうち,「朝バナナ」の文字部分は,「ダイエット成功のコツ40」の部分に比べて大きく記載されており,被告書籍の題号中当該部分が強調されているといえる。しかしながら,「朝バナナ」という用語は,朝食時にバナナと水を摂取することを基本とするダイエット方法として知られる「朝バナナダイエット」を略称した用語として一般に知られていること,両部分は統一感のあるデザイン,色調で記載されていることに照らせば,被告書籍に接した読者は,「朝バナナ」という部分を,原告の出版活動と関連させて理解するというよりは,むしろ,被告書籍が「朝バナナダイエット」に関する内容の書籍であることを強調する部分であると理解するものと考えられる。
以上によれば,被告書籍のカバーや表紙等における被告標章の表示は,被告標章を,単に書籍の内容を示す題号の一部として表示したものであるにすぎず,自他商品識別機能ないし出所表示機能を有する態様で使用されていると認めることはできないから,本件商標権を侵害するものであるとはいえない。
■ 「不正競争」について
自己の商品表示中に,他人の商品等表示が含まれていたとしても,その表示の態様からみて,専ら,商品の内容・特徴等を叙述,表現するために用いられたにすぎない場合には,他人の商品等表示と同一又は類似のものを使用したと評価することはできない。
前記1で認定したところによれば,被告書籍の内容は,「朝バナナダイエット」というダイエット方法を実行し,ダイエットに成功するために,著者が成功の秘訣と考える事項を40項目挙げるというものであり,題号の表示も,被告書籍に接した読者において,書籍の題号が表示されていると認識するものと考えられる箇所に,題号の表示として不自然な印象を与えるとはいえない表示を用いて記載されているといえる。
そうすると,被告書籍に接した読者は,「朝バナナ」を含む被告書籍の題号の表示を,被告書籍が「朝バナナダイエット」というダイエット方法を行ってダイエットに成功するための秘訣が記述された書籍であることを示す表示であると理解するものと解され,被告標章を含む被告書籍の題号は,専ら,被告書籍の内容を表現するために用いられたものであると認めるのが相当である。
なお,被告書籍の題号のうち,「朝バナナ」の文字部分は,「ダイエット成功のコツ40」の部分に比べて大きく記載されており,被告書籍の題号中当該部分が強調されているといえる。しかしながら,前記2(3)で述べたとおり,「朝バナナ」という用語は,朝食時にバナナと水を摂取することを基本とするダイエット方法として知られる「朝バナナダイエット」を略称した用語として一般に知られていること,両部分は統一感のあるデザイン,色調で記載されていることに照らせば,被告書籍に接した読者は,「朝バナナ」という部分を,原告の出版活動と関連させて理解するというよりは,むしろ,被告書籍が「朝バナナダイエット」に関する内容の書籍であることを
強調する部分であると理解するものと考えられる。
以上によれば,被告書籍のカバーや表紙等に被告標章を表示した被告の行
為は,不正競争防止法2条1項1号,2号所定の他人の商品等表示と同一若
しくは類似のものを使用した行為に該当するとはいえない。
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