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◆ 「海外ネット転送と著作権侵害 ロクラク事件」 【著作権】【公衆送信】
〔裁判〕(知財高裁平成21年01月27日判決 平成20(ネ)10055 裁判長・田中信義)
〔裁判〕(原審・平成19(ワ)17279 東京地裁平成20年05月28日判決 裁判長・清水節)
〔参考〕「録画番組の海外転送、TV各社の差し止め請求棄却…知財高裁」(読売新聞 2009年1月27日)
[概要]
ハードディスク・レコーダーを2台1組にして、その一方で日本国内のテレビ放送を受信・録画し、利用者に貸与又は譲渡した他の1台で当該利用者に日本国内で放送されるテレビ番組の視聴を可能にするサービス(ロクラク)の提供に対して、NHKと民放9社が著作権侵害だとして差止などを請求していた事件について、知財高裁で判決が出た。
結論は、テレビ局側の逆転敗訴。
裁判所(田中信義裁判長)は、「番組の録画と転送を行っているのはサービスの利用者で、被告はテレビ局の利益を侵害していない」と述べ、著作権侵害を認めてサービス停止と約730万円の賠償を命じた1審・東京地裁判決を取り消し、請求を棄却した。
なお、サービス提供業者は、「日本デジタル家電」(浜松市)。
[解説]
速報として、結論部分は次の点にあるようです。
即ち、「当裁判所は,争点(1)について,控訴人が本件番組及び本件放送に係る音又は影像の複製行為を行っているものと認めることはできない,すなわち,控訴人〔ロクラク業者〕の本件サービスは,利用者の自由な意思に基づいて行われる私的使用のための複製を容易にするための環境,条件等の提供行為にすぎないものと判断し,したがって,その余の各争点について判断するまでもなく,被控訴人らの請求は全部理由がないから,原判決中,控訴人敗訴部分を取り消した上,当該取消しに係る被控訴人らの請求及び附帯控訴をいずれも棄却するものである」と。
ポイントは、誰の主体的な意思に基づいて複製行為が為されているか、です。
この点の判断における【考慮要素】として、「控訴人が親機ロクラクを管理する場合においては,他人である海外の利用者をしてテレビ番組の視聴を可能ならしめることを目的とする点で,当該利用者自身がテレビ番組の自己視聴を目的として親機ロクラクを自己管理する場合と異なるが,本件複製の決定及び実施過程への関与の態様・度合い等の複製主体の帰属を決定する上でより重要な考慮要素の検討を抜きにして上記の点のみをもって控訴人が本件複製を行っているものと認めるべき根拠足り得る事情とみることはできない」と判示されています。
また、周辺的な問題についても、「必要不可欠の技術的前提条件」の整備への関与であれば、主体の認定に直ちに影響を及ぼさないとの趣旨の判断が下されています。
即ち、「本件サービスの利用者は,親機ロクラクの貸与を受けるなどすることにより,海外を含む遠隔地において,日本国内で放送されるテレビ番組の複製情報を視聴することができるところ,そのためには,親機ロクラクが,地上波アナログ放送を正しく受信し,デジタル録画機能やインターネット機能を正しく発揮することが必要不可欠の技術的前提条件となるが,この技術的前提条件の具備を必要とする点は,親機ロクラクを利用者自身が自己管理する場合も全く同様である。そして,この技術的前提条件の具備の問題は,受信・録画・送信を可能ならしめるための当然の技術的前提に止まるものであり,この技術的前提を基に,受信・録画・送信を実現する行為それ自体とは異なる次元の問題であり,かかる技術的前提を整備し提供したからといって直ちにその者において受信・録画・送信を行ったものということはできない」と。
判決文の終わりの部分で、【価値判断】が示されています。
即ち、「かつて,デジタル技術は今日のように発達しておらず,インターネットが普及していない環境下においては,テレビ放送をビデオ等の媒体に録画した後,これを海外にいる利用者が入手して初めて我が国で放送されたテレビ番組の視聴が可能になったものであるが,当然のことながら上記方法に由来する時間的遅延や媒体の授受に伴う相当額の経済的出費が避けられないものであった。しかしながら,我が国と海外との交流が飛躍的に拡大し,国内で放送されたテレビ番組の視聴に対する需要が急増する中,デジタル技術の飛躍的進展とインターネット環境の急速な整備により従来技術の上記のような制約を克服して,海外にいながら我が国で放送されるテレビ番組の視聴が時間的にも経済的にも著しく容易になったものである。そして,技術の飛躍的進展に伴い,新たな商品開発やサービスが創生され,より利便性の高い製品が需用者の間に普及し,家電製品としての地位を確立していく過程を辿ることは技術革新の歴史を振り返れば明らかなところである。本件サービスにおいても,利用者における適法な私的利用のための環境条件等の提供を図るものであるから,かかるサービスを利用する者が増大・累積したからといって本来適法な行為が違法に転化する余地はなく,もとよりこれにより被控訴人らの正当な利益が侵害されるものでもない」と。
基本的に、先日の「招きTV事件」(知財高裁平成20年12月15日判決)と同様の結論であり、予想された結果といえるではないでしょうか。これまでの流れを、価値判断を示して、それに基づいて法律構成を具体化した判決といえます。
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